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八郷・茅葺き古民家

 八郷の茅葺き古民家を訪れたいという願いがようやくかなえられた。 土浦のAさんの周到なアレンジで、腰上まで浸かりながら始まった一家総出のレンコン掘りに秋の風物詩を感じつつ「りんりん道路」を辿り、平沢官衛遺跡から不動峠を下って八郷に入る。

 朝日新聞社と森林文化協会の「にほんの里100選」にも選ばれている八郷は筑波山の東山麓に広がる豊かな農村といった佇まいで、田んぼのなかに点在するのは立派な瓦葺き農家ばかりで、茅葺きを見つけ出すのは至難の技。80軒ほどの茅葺き古民家へは保存会の案内人、新田さんの自転車に導かれた。



 茅葺き古民家は山麓の木立や防風垣「イグネ」と融け合っており、農道を分け入るように近づいて、ようやく姿を現す。 江戸時代に建てられ明治24年に改築された坂入家では当主の坂入さんが迎えてくれた。間口12間ととても長く、部屋数も9部屋あるという。7層にわたって葺かれている軒下の「トオシモノ」が美しい。ワラ、古カヤ、新カヤと葺かれ、重厚な趣きを醸し出している。棟端の「キリトメ」には「寿」の彫り物。国登録有形文化財指定(2010年)。

 次に案内されたのは「やさと茅葺き屋根保存会」会長宅の木崎家で、江戸時代からの母屋と書院の2棟があり、前庭との一体感が美しい。ワゴンを杖代わりに家人の老婦人がかいがいしく案内してくれる。母屋の「トオシモノ」は2メートルもの厚みがある。棟の仕上げは茅葺き技術の極み「筑波流」の代表的な「竹簀巻き」だ。老婦人の表情は茅葺き家と回りの環境に惜しまず手をかけて暮らしている誇りにあふれていた。  「石岡市八郷総合支所」近くのそば屋「かまたや」は街道沿いに立っている茅葺きで目立つ。小さいながら堂々としていて、時間があれば立ち寄りたいところ。

 尊皇攘夷の志士だった佐久良東雄(さくらあずまお)の旧邸も江戸時代(1751年)からの建物で重要文化財の指定を受けている。すでに補修が必要な傷みが目立つものの許可がなければ自由に補修もできない重文制度の難しさも見せつけられた。



 樹齢1300年の天然記念物「佐久の大杉」近くの大場家は観光ぶどう園を営んでいる。奥さんは「騙されて嫁に来た」といい、「茅葺きはホネだぞ」と聞かされたが本当だったと振り返る。大場家の有名な棟の装飾「松竹梅」のキリトメを作るときは竹先に白ペンキの色付け作業も手伝ったという。ブドウをたくさんご馳走になり話が弾んだ。

 案内してくれた保存会の新田穂高さんは、2000年頃に神奈川県から茅葺き古民家に魅せられ家族4人で移住。早速、雨漏りの洗礼を受け、補修の仕方を教えてもらいながら、茅葺き古民家と地域になじんできた。100年の歴史を刻む茅葺き屋は、その家に人々が生き続けてきた証しと思うようになり「やさと茅葺き屋根保存会」に関わるようになる。

 現代の茅葺きでは囲炉裏で火を使うことはなくなり、そのせいで茅も10年毎に葺き替えが必要という。茅葺き古民家の維持には、葺き替えや補修に茅…八郷ではススキを使う…の確保が必要だが、つくば市の研究機関「高エネルギー加速器研究機構(KEK)」の広大な敷地を茅場として利用することがゆるされ、毎年12月に県内外のボランティアや関係者で「筑波山麓茅刈り隊」を組んで行う。

 こうして現在版の「結い」による茅の確保と葺き替えや補修にたずさわるのが、保存会の大事な仕事。宇宙の起源や物質と生命の根源を探求しているKEKの先端研究所と農村文化の保全が結びついているところも素晴らしい。

 余談ながら、新藤兼人監督の遺作となった映画『一枚のハガキ』の最後の舞台は八郷の茅葺き古民家を模して、現地の八郷でセットが組まれ撮影された。その映画での佇まいと茅葺き家の炎上シーンも胸に焼きついている。(2012/10/25)




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