●HOME ●自転車は楽しいよ  いろいろな自転車  自転車の乗りこなし
 自転車と道路  サイクリングの実際  自転車と健康
●近場のサイクリング  国内自転車旅  海外自転車旅

利根川下り   2002/09/19〜23


 板東太郎、利根川。長さこそ信濃川の367kmについで第2位(322km)だが、その流域面積は日本一(16,840km2)だ。源流は群馬・新潟県境の大水上山(1850m)の南面の雪渓に発する。もっとも流域面積が日本一となったのは江戸時代直前から同時代初期にかけての「利根川東遷事業」(1594年〜1654年)で、水運開発と、東北と関東の経済交流、江戸を水害から守るという目的があった。



 現在の利根川は上流に最奥の矢木沢ダム(奥利根湖)と、その下流の須田貝ダム(洞元湖)があり、尾瀬のある至仏山から流れ出た楢又川の水を利用する奈良俣ダム(ならまた湖)からの水が合流して、下流の藤原湖(藤原ダム)にそそいでいる。そしてなんといっても805本もの支流を有する日本を代表する川だ。

 自転車を友とするようになって、ボクにとって多摩川はごく日常的なフィールドとなっている。多摩川の上流や下流に何度も通い、また浅川や大栗川、残掘川といった多摩川の支流にも自転車を乗り入れ、次第に川に魅せられるようになった。川の堤防や土手は、川にもよるが何といっても開放感があり、舗装・未舗装の別はともかく、クルマの危険から解き放たれて自由になれるのがうれしい。

 そうこうしているうちに、関東平野を作りあげた利根川を上流から河口まで走ってみたいと思うようになった。6月頃から構想を温め、インターネット情報を中心に利根川の走りかたの研究をした。

 いよいよ、時期が到来。4泊5日の利根川の旅にでることになった。今回の旅のコンセプトは上流から河口までを下りきること。全長300kmを越す長大河川をなるべく効率よく下ること。荷物はなるべく軽く、宿泊施設を利用して走ること。主にこうした考えで、上流部の最寄り駅まで輪行し、自転車で行ける最上流部まで行き、そこからスタートすることにした。

<1日目 9月19日>快晴、大陸性高気圧でさわやか。

 8時40分に自宅をでて、府中本町駅まで4km。そこから約3時間半の輪行でJR上越線、湯檜曽の地下駅に着く。外は眩しいほどの昼下がりだ。クルマもめったに通わぬ山の駅だが、ある年、天神平に向かうのに豪雪のためクルマが進めなくて、この駅で夜明けまで仮眠したことを思い出す。
 自転車を組み上げ、荷物をつけるのに20分もかからない。ここから利根川の上流を目指す。といっても源流までは行けない。あくまで自転車で登れる利根川の最上流と割り切る。奥利根湖まで道はあるが、奈良俣ダム(900m)まで登った。ならまた湖とその東側の至仏山は西日を受けて赤く輝いていた。サイクリングの出発点を標高900mの奈良俣ダムと決める。
 至仏山は40歳台の頃、一面の雪原と化した尾瀬ケ原にテントを張り、山スキーをした思い出がある。豪快な山スキーができた。ボクが山スキーに凝りだしたのは、この至仏山の豪快なスキー体験が原点だったかもしれない。
 泊まった宿は葉留日野山荘(標高825m)といって、山の分校を改装した登山者向けの温泉宿だ。笠ケ岳を経て至仏山に登り尾瀬ケ原に至るコースがある。
 ここにも近くの藤原スキー場に来たときに泊まったことがあるが、思い出せない。赤いとんがり屋根のしゃれたたたずまいが、ススキ、コスモスと調和している。宿の前の湯の小屋川を流れる清流の音が聞こえる。
 この一帯は湯の小屋温泉と呼ばれ、ほかに数軒の宿もある。温泉はぬる目の単純泉だった。

 本日の走行距離:27.9km(うち奈良俣ダムから葉留日野山荘までの下りの距離:3km)。走行時間:2時間20分。


<2日目 9月20日>晴れ

 湯の小屋の宿では、低山スケッチクラブという団体と仲良しになり、清水洋二さんという「先生」と呼ばれている絵描きさんの発案で、盛大な見送りを受けた。宿の庭は分校のグランドだから広い。それを1周してから、拍手に送られて湯の小屋温泉を後にした。
 水上までの道も結構なアップダウンがある。下り一方というわけにはいかない。藤原トンネル手前では、利根川ははるか下を輝きながら流れている。水上の下流の諏訪峡大橋で長袖シャツを脱ぐ。強い日差しだ。気温は18度。
 後閑からはR291からR17となり、右岸に回ってしまった。戸鹿野橋から左岸に入ったが、また右岸に戻る。子持村の吹尾でバイパスを通り、わりとスムーズに中流のスタート地点である渋川の大正橋に着いた。
 上流部には、サイクリング道路はなく一般道路を行くために、クルマには注意が必要で、トンネル内も含め路肩がないところが多かった。しかし、道路も時折川端を通過するので、利根川の上流部の瀬や淵、緑や民家などとの美しい風景は見ていて飽きない。ついついカメラを向けてしまう。標高差700mを利根川が駆け下りる有様や蛇行の風景が目に焼きついた。

 大正橋のたもとで昼食にする。たまにサイクリストが立ち寄ると店の主人の話。
 ここで、短パンにはきかえ、ここからはじまる自転車専用コースを走る。上毛大橋を越えるころ距離計は100kmを越えた。ダートコースも見つからず、右岸台地の一般道をゆくはめになる。一口にダートといっても、利根川の場合、堤防の上のダートのほか、河川敷のごろた石や漂流堆積物などがあり、MTBでも抜けられないところもある。そうした場所はあっさりとあきらめて、一般道にまわらないと時間ばかりとられることになる。
 右岸で風力発電の大きな風車を見かけた。風は弱くほとんど回転していなかったが、冬など季節によっては風が吹くのだろう。
 利根川の中流部は右岸側がやや台地状であったり、左岸側にタンボが広がったり、いろいろだ。なるべく走りやすい道を求め、こうした右岸、左岸を行ったり来たりを繰り返す。ある時は鬱蒼とした竹藪の中を走り、長い長い堤防の上のダートを走ったりするころには尻が痛んでくる。夕日を背に受けて、サイクリストの長い影が河川敷に投影される、影はますます長くなり、やがて月も顔をだす。館林はまだはるか先だ。
 ようやく昭和橋を渡る。橋の上からの落日はすごかった。強く太い落日光線が利根川に反射している。
 館林では利根川に敬意を表して川魚料理を食った。コイのあらい、ナマズの天ぷら、ウナ重だったが、疲労困憊の身には少々もたれ気味だった。なにしろ本日の走行距離は150kmと出た。これはボクの自転車人生で初の快挙だ。疲れるのは無理もない。ダートも含むサイクリングは1日70kmが限度だろう。

本日の走行距離:149.5km
走行時間:9時間40分
湯の小屋から昭和橋までの距離:140.6km



<3日目 9月21日>晴れ

 館林の宿を8時半にでる。昭和橋まで戻り、右岸を走る。埼玉大橋で延べ走行距離200kmを越える。ここで左岸に渡り、一般道を走り、新三国橋で鬼怒川を渡る。
 土手上のサイクリング道路は快適だ。自転車専用として作られている。多摩川のサイクリング道路のように歩行者優先という表示はない。もっとも沿岸の人口密度は多摩川と比べて相当少なく、散歩している人はごくたまにしか見られないから歩行者とのトラブルがないからだろう。
 鬼怒川にしろ、利根川本流にしろ舗装されたサイクリング道路は、中流部と下流部で右岸と左岸を選びながら走る場合、約60%程度の完成度だろうか。ダートの土手道が結構多く、場合によっては道そのものがない場合もある。そういうときは一般道にまわるしかない。
 この快適なサイクリング道路をひたすら南へ下る。ときにはMDプレーヤーで好きな曲を聞く。「サライ」であったり、アメリカンフォークの「River Come Down」であったり、ひばりの「川の流れのように」であったりする。
 途中、グライダーの基地があり、盛んに飛んでいる。
 ようやく芽吹橋に着く。ここからは利根川の下流域だ。ここで握り飯をぱくつく。バッタの交尾が白昼堂々と営まれている。ヒバリ、ツバメ、モンシロチョウなど鳥や昆虫の天国でもある。
  …白昼堂々バッタの交尾 利根は大らか…
 午前中の鰯雲は消えて、薄い雲が一面に広がってきた。
 「海から100キロ」のキロポストと出会う。ようやく利根川の3分の2を走り、残りは100kmとなったわけだ。キロポストに頬ずりをしてみる。利根運河を越えたところから柏市サイクリング道路は始まっている。快適な道だ。この道をのんびり走っていたら、10メートルほど先から雄のキジが飛び立った。キジのような大型の鳥もいる利根川の自然はかなり豊かだ。
 午後2時ちょうど、大利根橋に到着。全長1209メートルと利根随一の長い橋を渡り、取手にむかう。
 駅前ビジネスに宿をとり、自転車をエレベータで運びフロントに預ける。ビールを飲んで、フィットネスクラブのサウナに入る。クラブの室内で黙々と自転車漕ぎをやっている男性を見て、思わず吹き出した。利根川という素晴らしいフィールドがごく近くにあるのに、なんでお前はそんなつまらないことに金を使ったいるのだと…。
 また、利根の河原ではいろんな遊びをしている人が結構多い。でもラジコン遊びやゴルフの練習など、なんだか小さいな。

本日の走行距離:89.1km
走行時間:5時間45分
昭和橋から大利根橋までの距離:79.7km


<4日目 9月22日>曇り後小雨

 いよいよ銚子に向かう最終日だ。天気予報で午後から雨とのことだったので、出発を早め、7時15分に取手のビジネスホテルを後にする。
 大利根橋には7時20分着。ここまで一度も落車していない。自転車の調子も最高だ。相当のダートを走った。利根川のようなさまざまに変化する道にはランドナーが最適だ。MTBでは重く、ロード系の自転車ではダートコースでてこずるだろうし、パンクもするだろう。その点、ランドナーは軽くてタフな自転車だ。

 南風が吹いていて川面には白波が立っている。そのためスピードは大幅ダウンだ。
 通常、平地の舗装道路の場合、時速30km近く出せるが、この風では20km出すのが精一杯で、17kmに落ちることもある。追い風に変わることを願いながら長豊橋から左岸に入り、ひたすら漕ぐ。
 もう秋だ。シオカラトンボが飛んでいる。河川敷には放牧の乳牛が草をはんでいる。なんともいえない安らぎを感ずる。昔からの川と人間の営みを感じた。
 左岸の神崎大橋を通過する。何年か前、この橋をウォーキングで渡ったことがあったことを思い出す。
 この左岸側には霞ケ浦があり、そこに向けて導水する利根機場も見かけた。水郷大橋を右岸に渡る。
 河原にはお祭りの練習だろうか、近在の人々が幟や太鼓、鐘などを打ち鳴らしいる。50人ほどのグループだ。
 さらに進むと、川岸に大きな木製の鳥居が立っている。香取神宮の津宮浜鳥居だ。香取神宮と利根川は特別な関係にあるのだろう。一種独特の畏啓の雰囲気が感じられた。
 河口から32.5km地点で、ポツポツと降ってきた。いよいよ雨か。降られるのは嫌だから自然と足に力が入る。やがて左岸に鹿島臨海工業地帯の煙突とそこから吐き出される水蒸気が見える。河口はまもなくだ。
 河口まで30kmを切ってきた。16キロポストでR356に乗る。そのまま走り、ついに銚子市に入る。銚子市役所に12時半に到着。風は相当強い。河口が見える銚子漁協には13時07分着。距離計は366.3kmを指していた。


本日の走行距離:103.5km
走行時間:6時間00分
大利根橋から銚子河口までの距離:96.8km
平均時速:17.2km

<5日目 9月23日>曇り

 今日はおまけ、銚子の宿から犬吠岬の「地球が見える展望館」に立ち寄り、利根川と太平洋、九十九里などを遠望する。銚子電鉄の犬吠駅から輪行し東京にむかう。

 利根川を走るのは季節的に何時がいいか。夏はカンカン照りの長時間走行となり、相当の消耗を覚悟しないといけない。冬は風の影響が相当あるだろう。向かい風ならほとんど進むことはできないかもしれない。そうすると春か秋の安定した季節を選ばなくてはならい。どちらかといえば、日照時間が長い春がいいだろう。

本日の走行距離:10.0km

総走行距離:381km(参考:東京・名古屋間366km)
奈良俣ダムから銚子河口までの合計走行距離:320.1km






TOP