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最上川下り       2003/05/29〜30 


 日本三大急流のひとつといわれる最上川。吾妻山系に源を発し、酒田で日本海にそそぐ全長229キロの川。冬、酒田の河口にはシベリアから白鳥の大編隊が飛来する。最近ではその数、8000羽を越え、3年連続日本一を記録しているという。最上川は山形県の代表的な川であり、源流と河口も同じ県内にあるという大きな河川としてはめずらしい。多くの県民がこの川とともにさまざまな関わりをもって暮らしているのだろう。
 最上川は米沢の南、約20kmの吾妻山(2035m)が源流だといわれている。源流は白布温泉を駈け下り、大樽川、松川と名前を変えて長井市の長井温泉あたりで白川と合流後に最上川となるとされているが、そこより20km以上も上流の米沢駅近くの住之江橋、相生橋には最上川の文字が読めたし、地図上も米沢周辺は最上川と書かれている。したがって米沢を最上川のはじまりとみなして、ここからほぼ最上川沿いに日本海まで、舟ならぬ自転車で下ることとする。

 天気予報を見ていたが、米沢、酒田の降水確率も20%に回復し、念願の最上川下りを決行。相棒のT君のドタキャンでソロとなる。
 5月29日。夜行バスは福島から国道13号線の山越えで、米沢に午前5時過ぎに着いた。東北急行の米沢営業所で支度を整え、出発は5時半。
 川の流れは清流だ、はるかに源流の吾妻連峰がかすんで見える。米沢市役所前を通り国道13号を行く。左折して239号に。一面の見渡すかぎりの田んぼのなか、支流の鬼面川をゆく。早くも早苗が植え終わっている。見事だ。河西町から県道242号の静かな道を行く。朝もやのため山は見えない。しかし朝日はさんさんと照っている。天気予報では今日の最高気温は30度との予想。
 宅地「坪2万円」との看板がみえる。街道添いの民家だ。東京あたりとえらい違いだ。県道には地吹雪用の柵が折り畳まれてある。冬はさぞ厳しいところだろう。


さまざまな表情を見せる最上川

 国道113号線を行く。白川橋から白川と朝日岳(標高1870m)の残雪が眺められた。県道9号を行く。あやめ公園で朝食休憩(7:37〜50、35km)。賜置野川の野川橋、2両編成の山形鉄道の電車がのんびりと鉄橋を渡っていった。こちらものんびり。最上川の睦橋のどかな雰囲気、ひばりのさえずりが聞こえる。
 県道9号をどんどん行くとやがて山が迫ってきた。最上川はこの山をどのように抜けるのだろう。川が蛇行している理由がわかったような気がする。最上川が寄り添ってくる。道路からでも瀬音が聞こえる。川幅は70m程、山肌を縫うように川が流れ、サギが獲物を狙い、トンビも同じだ(8:51、50km)。
 簗場が見えた、対岸に囲いをつくりアユを導くのだ。誰もいない。まもなく流域唯一の大滝ダムと思われる。このあたり、かつて訪れたドイツのネッカー川の上流に似ているような気もする。
 朝日町に入る(54km、9:13)。古代の住居を模した8戸ばかりの集落が現れる。朝日町は山深い。この山峡を最上川は削りに削って流れている。山腹には、桐の花が真っ盛り、ウグイスの囀りも聞こえる。
 赤い橋が架かっている(瀬音橋/9:46、63km)。瀬音が聞こえる。ゆっくり走るにはもってこいの道だ。山坂はほとんどない、田んぼ、緑、花の世界だ。
 平安時代の古今集に「最上川のぼればくだる稲舟のいなにはあらずこの月ばかり」という歌がある。ちょっとはばかれる意味の恋歌らしいが、大昔から稲を運ぶのに、最上川を利用していたことが窺われる。

     最上川瀬音聞くたびこころはやる

 宮宿で国道287に入る(10:22、70km)。リンゴの摘花作業をしている夫婦と少し話す。「あそこに鉄塔さ3本あるべさ。そのまん中の鉄塔の麓によ、おしんの撮影の家があるだべさ」と教えてくれた。
 月山が見えてきた。一面の残雪だ。そのうえに夏雲が立ち上がっている(道の駅「大江」/10:45、75km)。
 健康温泉館(舟歌温泉)で時間調整(11:00〜12:00)。300円の安い温泉(透明、灰色)が助かる。

     残雪の月山、ふるさとの丘に似て

 国道458号、月山に向かってのんびり走り左沢駅前の蕎麦屋(83km、12:23〜13:00)で昼食。左沢と書いて「あてらざわ」と読む。
 県道23号で寒河江市に入る(14:00、90km)。月山を源とする寒河江川がとうとうと流れている。月山ははるか北方向にベッタリと残雪を蓄えて控えている。川はすぐ先で最上川となる。
 この直後、前輪がパンク。チューブを取り替える。予備のチューブをもってきてよかった。チューブ交換に30分かかる。あとで村山の自動車整備工場にチューブをもって行き、直してもらったところ、チューブのリム側に穴があったそうだ。きっと、前回のチューブ交換の際、道具で傷をつけたのではないかと思う。チューブ交換は慎重にやるべし。
 最上川は河北橋(15:12、96km)まで来た。ここでは川幅広く、とうとうと流れている。初夏の日がぎらぎらと降りそそいでいる。
 東根市に入る。県道の両脇にはサクランボがかなり大きな実をつけている。ほんのり黄色味を帯びはじめたようだ。食べ頃は6月末から7月だ。東根駅から県道120号をたどり、東根温泉着(16:00、105km)。
 宿は夕食のみで7000円。安かったが、まずかった。温泉は透明の茶褐色。

 5月30日、寝床を抜け出し、4時半には「旅館さくら湯」をあとにした。
 早起きは3文の得というが、朝飯まえに30kmほど稼ぐと、あとが楽だ。そしてコンビニの飯でもうまいから、1石2鳥というべきか。村山の奥羽本線の楯岡陸橋を経て碁点に向かう。途中で日の出(4:45)。碁点とは最上川の川面に岩が碁盤に碁石を並べたように突き出ており、昔は舟の墓場のようなところだったらしい。たしかに川面には12個所ほどの石頭が見られた。これでは、そうとう慎重な操船がもとめられたことだろう。同時に最上川の船下りの乗船場でもある。早朝からヒバリやスズメがかしましい。

     五月雨をあつめて早し最上川(芭蕉)

 龍神の吊り橋。なぜが案内表示板が英語とロシア語。この龍神の吊り橋を自転車で右岸に渡る。右岸からはしばらく川沿いの遊歩道を行く。ところどころにサクランボが見られる。朝日が眩しい。川は大きく蛇行し、淵いっぱいに水をため込んでいる。「大淀」だ。タイザンボクの白い花、桐の紫が緑に映えている。大味で素朴な風情が最上川には似合うようだ(5:24、13km)。

 三ガ瀬(「みかがせ」と読む。5:30、14km)では淵から瀬になる。残雪が朝日を受け輝いており、桐の花も光っている。
 川は大きく蛇行し、三難所船着き場がちょこっと突き出ている。国道347号線(西部街道)の長い(15分間)登りを行く。「荷渡し神社」という山形の原風景のような光景と出会う。長い下りはアウターギアで45kmをマーク。
 気温16度。虹の大橋(6:00、23km)。茶色の屋根、緑、残雪と風景は溶け合っている。
 船役所跡が見られる。その昔、行き交う舟から税金を巻き上げた役所だ。
 「最上川を清流にする宣言の町、大石田」に入る。ここはその昔、流域交通権を牛耳って栄えたところだ。いまは環境対策に熱心なのはいいことだ。


さまざまな表情を見せる最上川

 川が湾曲したところにある川前観音のチョットした光景もまたいい。最上川はどこでも絵になる(6:27、29km)。
 県道の長い登り、フロントインナーギアで時速6kmに落ちる。峠の手前で一休み。眼下には朝もやにくすんだ平野が広がり、左手には針葉樹林の間を最上川が湾曲して流れ、右手には水田が棚田状に延びて、それを民家が囲み、またそれを杉林が囲むといった、なんとも言えない風景。遠方には岩手方面の山が何重にも重なり、日本的な風景が展開する。こうして一汗かいて眺めるのもまた格別だ。
 舟形町に入る(6:55、36km)。下りでは風になる(58kmをマーク)。離れていた最上川が見えだした。とうとうと流れている。そのそばをまた登りにかかる。
 県道30号は、36号線を越え地蔵堂に向かう。山のなかだ。腹が減ってきたがコンビニはおろか民家すらない(7:14、42km)。
 地蔵堂を左に折れ、赤松小学校を経て大蔵を目指す。残雪の月山がかなり近づく。雪は両サイドの山腹に雪田となって残っている。早苗が朝日に輝いている。
 赤松小学校近くのコンビニでようやく朝食にありつく(7:26〜40、45km)。真っ直ぐいけば肘折り温泉方向だが、右折する。
 大蔵橋を渡り右岸に入る。まもなく本合海(もとあいかい)の芭蕉乗船の地だ。流れが早い最上川、月山の残雪が光っている。ここで、初めて本流に降り手を流れにつけてみる。流れは清く、冷たい(8:16、54km)。
 酒田までは50kmを切った。国道47号線(鶴岡街道)を最上峡に向かう。山がせまり、道はこの国道きりしかない。
 戸沢村にはいる。気温21度、気持ちがいい。韓国スタイルの道の駅、安っぽいキムジュランドを通過。戸沢村役場(8:54、63km)。気温24度、暑い。山が迫る。

     最上峡、いらしゃいと桐の花

 高屋の渡し。対岸は千人堂。川下りの船頭さんたちと話す。ようやく川が澄んできたようだと言っていた。ちょうど良いときに来たようだ。
 白糸の滝、屏風のように切り立つ山の中腹から白糸のように滝が落ちている(残念ながら写真では見えない)。最上川随一の風光明美なところ(9:37、73km)。

 戸沢村と別れ、「さみだれ大堰」。落差1m以上で舟は越えられない。
 清川で右岸に渡り、土手上の「河川管理道路」というのを行く。完全舗装で、これが河口付近まで続いている。快適だ。風力発電の風車群、11基もあり壮観だ。山は去り、いよいよ庄内平野だ。最上橋(10:11、83km)で海まで21kmとなる。
 18km地点で鳥海山が見え出す。あの何度も登った鳥海山もベッタリと残雪に輝いている。その前にはJAまつやまの巨大サイロが立っている。米どころ庄内平野を彷彿とさせる。羽越本線通過(海まで10km)。起伏はなにもなく見渡す限り水田だ。
 海から3.6km、白鳥渡来地だ。餌付けのための桟橋が作られている。子どもたちが世話をするようだ(11:08、103km)。長い長い出羽大橋を左岸に渡り河口に向かう。宮浦海岸だ。
 こまかな砂にタイヤを取られ、自転車をデポ。波打ち際まで歩く。遂に日本海だ(11:40、107km)。

     暑き日を海にいれたり最上川(芭蕉)

 国道112号線まで戻り、「かんぽの郷」で入浴、休憩。土門拳記念館に立ち寄り、酒田駅へ(16:33、118km)。

 最上川を米沢から酒田まで。ほぼ山形県を南から日本海に抜けた。水量豊かな最上川と、残雪を戴いた月山や鳥海山が印象的だった。2日間の総走行距離は228km。帰路は酒田からJRで新庄まで輪行。新庄から東京まで夜行バスで戻る。(了)




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