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北 上 川      2007/4/30〜5/02

 北上川の長さは約243キロと全国5位だが、東北では随一の大河だ。岩手町御堂に水源を発し、岩手中央部、奥羽山脈と北上高地の間の北上盆地を北から南へ宮城東部の追波湾に注ぐ。源流「弓弭の泉」は平安時代、源義家が、日照りに苦しむ兵馬を助けるために弓で岩を突くと、そこから清水が流れ出したという伝説に由来する。松川、雫石川、中津川、稗貫川、豊沢川、猿ヶ石川、和賀川、胆沢川、磐井川の支流を集め、宮城で広大な沖積平野をつくるが、今回は、旧北上川を石巻まで下ることにする。
 4月30日。盛岡は春霞だ。かすかに白い岩手山が望める。桜は満開。新幹線の岩手沼宮内駅を降りたのはたった二人。10時スタート。気温17度だ。暑い。国道4号線は連休中でも結構トラックが多い。10時40分、御堂観音着(距離15キロ)。またの名は「北上山観音」。北上川源流は、ちょろちょろと心細い。ここが大河の源流とは…。
 泉の水を口に含み、河口までの安全を祈る。川幅は1メートル足らずだ。ここからひたすら4号線を下るのみで、さしたる観光スポットもない。
 北上川のほとりには啄木の「やはらかに柳あおめる北上の 岸邊目に見ゆ なけとごとくに」の歌碑が岩手山を背景に立っている。「かにかくに渋民村は恋しかり おもひでの山 おもひでの川」とも啄木が詠ったこのあたりの美しい風景を堪能する。
 続いて「石川琢木記念館」に着く(41キロ、12時)。学芸員に「春霞で岩手山が見えませんね」と云ったのに、返ってきた答えは「春休みは終わりました…」だと。とんちんかんな岩手の女との会話だ。のんびりしている。


 「盛岡市内はどっちに行けばいいのですか」。「どっちさも曲がんねえで真っ直ぐ、真っ直ぐさ行け」…と教えてくれた男もいた。
 四十四田ダムを経て、高松公園の見事なサクラを愛で、高台に建つロシア正教の教会に立ち寄る。夕顔瀬橋ではかなり広い川幅を白波をたてて流れているさまを見る。背後に岩手山が霞んで見える。桜は満開(14:30。60キロ)。
 矢巾温泉ヘルスセンター着(15:50、86キロ。山里のひなびた温泉地だ。大勢がゲートボール大会にいそしんでいる。みんな車だ。自転車なんて誰もいやしない。


 5月1日。午後から雨の予報なので7時に朝食を済ませて、早めに出発。
 今回は主な観光スポットだけをつないだルートをGPSに表示させて走っている。もちろん数キロごとの直線になり、蛇行する北上川の上にもルートが延びることになるが、それでも現地判断で自由に道を選べるので、まことに都合が良い。ポイントは逃さずに、ルートは自由になるという使い方だ。この良い点はルート作成が簡単になるだけでなく、ルートに縛られなくても良いところだ。
 矢巾温泉から北上川へ戻る道はほとんど田園地帯だ。7時半の気温は10度。通勤ラッシュの国道4号線を走り、柴波橋で北上川に戻る(7:40、16キロ)。
 「われらに要るものは 銀河を包む透明な意志 巨きな力と熱である」と彫られた宮沢賢治の羅須地人協会は農業高校のなかにあった(8:45、33キロ)。下向きかげんで考え事をしている賢治のブロンズ像があり、清々しい雰囲気がある。続いて急坂を登った丘の上にある「宮沢賢治記念館」では『ヨタカ』の鳥が迎えてくれた。そして河岸に凝灰岩質泥岩が露出していることから「イギリス海岸」と賢治が名つけた川原。さらに走って賢治の「雨にも負けず…」碑に着く(10:40、52キロ)。このあたりはまさに「賢治ワールド」なのだ。



  「北上川サイクリングロード」を進み、北東北を代表するさくらの名所「展勝地」はおおらかで美しいところ(11:40、66キロ)。ここで花見客のための臨時の「渡し」に乗って右岸に渡る。目当ては美しい和賀川の合流点に立つ、「北上夜曲」の歌碑を見ることだが、これは見つからなかった。
 広大は河川敷の舗装路を走る。誰もいない。河川敷のなかに実験農場のようなところもあるなど、河川敷は農業にも利用されている。
 誰も採らないフキノトウ、ツクシが伸び放題だ。
 「蔵の街」の江刺市に着く(13:40、89キロ)。明治記念館、「鐘の鳴る丘」もある。北上川の水運とともに栄えた蔵だが、伝統的な建物を現代利用する知恵が見られる。水沢市では「舘の大清水」(たてのおおすず)という湧き水がある場所に立ち寄る。野菜を洗うなど今でも生活に利用されている。
 北上川を展望できる義経堂(15:30、117キロ)に登り、当時の武将の気分になってみる。一ノ関ではログハウスのロシア正教会に立ち寄る。
 一ノ関の駅前旅館いわぶち屋着(16:15、131キロ)。銭湯に行く。雨が降り出してきた。飲み屋で宇都宮から下北まで走っているという青年と会う。




 5月2日。いわぶち屋の若主人は出がけに気を使ってくれた。ビタミン剤とチョコをくれた。自転車の旅は大変だろうという心使いだ。とても嬉しい。
 9時現在、雨は小降り。靴の中まで濡れたが、川崎まで山越え道を抜けてから北上川の左岸を下る。雨に煙る風景もなかなかの風情だと思ったら、その後、猛烈な雨となる。でも雨具は万全。しかし汗でポケットに入れた行程表がぼろぼろに。
 宮城県に入る(10時、36キロ)。11時20分。雨あがる(58キロ)。御岳堂駅の近くに新旧北上川を分ける鴇波洗堰があり、川は旧北上川となる。カエルとウグイスの鳴き声が聞こえる。早くも田植えを済ませた田もある。雨上がりの川面に緑が映え、山々の襞からは水蒸気が立ち上っている。
 遂に河口から10キロ地点に来る。北上川の運河の名残り石井閘門、中瀬に建つロシア正教を見て、河口に架かる大橋の上から北上川と石巻をカメラに収め、石巻漁港、サンファン号を見に行く。たいそうな金をかけている。蒸しホヤとビールで完走を祝う。鈴木民宿着(113キロ、16時)。濡れたものを乾かしたり、自転車を洗ったりと忙しい。
 3日間で走った距離は北上川の総延長247キロにたいし330キロ。さすが東北の大河だ。


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