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函館から知床、網走へ

2013年6月

   ●函館・駒ヶ岳周辺




 北海道の自転車旅は2回目だが、今回は函館から知床・網走までグループで走ってみた。

 初日の昼頃に函館空港着、出迎えてくれたY氏と合流。あらかじめ送っておいた自転車を受け取り、組み立てて、回転寿司屋「函太郎」で海鮮寿司を堪能し、曇り空のもと立待岬、ハリトリス正教会、金森倉庫、五稜郭の函館定番コースを回る。その後クルマで駒ヶ岳の麓にあるY氏の手作り山荘へ。





 翌日は晴。駒ヶ岳を左回りにほぼ一周するのだが、Y氏がいい道を選んでくれた。内浦湾を隔てて室蘭がはっきり見える。72歳の地元サイクリストがしばらく付き合ってくれる。しかし駒ヶ岳のピークは雲で覆われ、終始その全容を見せてくれなかった。中国人観光客があふれている大沼公園を散策後、Y氏と別れ大沼公園駅から特急で輪行、洞爺へ。洞爺駅から少し坂を登り、2キロのトンネルを抜けて洞爺湖へ。湖畔の美しく楽しいサイクリング道を走り、昭和新山の麓の宿へ。



   ●洞爺湖から登別へ



3日目は有珠山と昭和新山の間の道道を難なくこなし、盛んに蒸気をあげている褐色の昭和新山と有珠山を結ぶロープウエイをくぐってって国道に合流。曇りの予報が、途中で霧雨となり、小雨に変わるなか約10キロほど走る。
 室蘭で雨止む。高台から工業地域を見下ろす。白鳥大橋は自転車・歩行者通行禁止のため、東室蘭を目指してショートカット。
 海岸沿いの国道からゆるい登りを登別温泉へ。周りの風景が観光気分を誘う。
 クマ牧場への急坂をこなし、ロープウエイで山頂のクマ牧場へ。
エゾヒグマの保護、研究、展示をしている施設で、ヒグマの大きさに驚かされる。人間が檻に入って巨大なクマを観察する。観光客からエサをねだる仕草が面白い。テレビでは知床には2000頭ほどのヒグマが棲息し、人を恐れないので「新世代ヒグマ」と呼ばれているという。
 登別温泉の地獄谷巡りも興味深い。噴気や間欠泉など自然の姿に接し、ホテルへ。



 4日目。霧雨の中、登別温泉から7キロの下り。スリップに注意して走る。白老に着くと霧雨も止む。R36はひたすら真っ直ぐ。途中でヤング4人が追い抜いて行く。サケが登って来そうな白老川を渡る。
 やがてポロト湖畔に広がるアイヌ民族博物館に到着。アイヌの重要無形文化財イオマンテリムセの踊りなどを見る。

 独特の弦楽器トンコリが「ビンビン」と響く、「ピリカの歌」の哀愁を帯びた歌声。輪になって踊る勇壮なエリシリムセ。ときおり男性の掛け声が響く。最後は口にくわえたヒモがついた笛、ムックリの演奏。どれもユニークでこうした形で文化の伝承をするのはたいへんだろうが、比較的若い女性と男性の真摯な姿に接することができた。



   ●錦多峰川を樽前山へ

 錦多峰川に沿って樽前山に向かって遡上する。標高差400メートルの緩い登りで道も良いので楽勝だった。ときおりクルマが追い抜いて行く。樽前山5合目の登山口には「熊出没」の看板が…。そこから下りで支笏湖湖畔へと思ったが、支笏湖は深い森の中で、見ることは出来なかった。

 やがて国道と平行しているサイクリング道路に入る。美しい森の小径の森林浴サイクリングを楽しむ。10キロ以上の長い下りの途中にあるサケマス孵化場を見る。シーズンではないが、昨年孵化したサケの幼魚が美しく群れており、幻の魚イトウの巨大な姿もあった。

 千歳川の豊かな自然を十分に楽しみ、千歳市内へ。さらに北海道らしい大規模農園が広がるなかを走る。大豆、トウモロコシ、ジャガイモなどの単作の大規模経営で、牧草も大型機械で乾燥させたり、それを取り込んだりしている。119キロ走って、4時半に由仁の温泉リゾートホテル着。

   ●夕張の黄色いハンカチ広場

 5日目。由仁から夕張を目指す。道は標高200メートルほど高度を上げてゆく。大蛇の沢川には大きな蕗のなかに野生化したルピナスの群生が見られた。メロンのハウスが見えてきた。ブランドの夕張メロンだ。2月~3月にかけて重油で育てられたメロンだが、今年はようやく出回り始めたところで価格は例年に比べ、かなり高め。1個3000円以上するが、本場のメロンはやはり美味い。幸せな気分にさせてくれる。7月になると価格はそれなりにリーズナブルになるという。

 目当ての「幸せの黄色いハンカチ広場」は山中のルピナスの花に囲まれた炭住の背後にひっそりとあった。山田洋次監督のファンがクルマでやって来ている。



   ●釧路から大湿原へ



 新夕張駅で自転車を畳み輪行。新得で乗り換えた釧路行きの特急の車窓からは道東の原野ばかりで、この間を列車にして正解だった。
 列車のアナウンスが「エゾシカが線路に入る場合があるので、急ブレーキをかけることがあります」と云う。釧路に近づくにつれ、海が見え始める。釧路は海霧に包まれていた。14度と寒い。話しかけてきた鉄道公安官は、夏でもストーブを炊かない日は10日ほどしかないと云う。駅近くの公共の宿着。

 6日目。朝食前に啄木の歌碑があるという南大通り、通称「啄木通り」をポタリング。所々に啄木の歌碑があり、彼の70日の釧路の暮らしが詠まれている。



 釧路川と釧網線にはさまれて走る。少し蒸し暑い。湿原に鳴く蝉、小鳥の声を聞きながら湿原を目指す。屈斜路湖を源流とする釧路川は長さ124キロ。昔の海が「海退」現象で泥炭層の陸地となる。大規模な湿原のうち一部を特別保護区に指定。ラムサール条約登録地域でもある。規模は東西25キロ、南北36キロ、面積18289㌶。約1400の動物と600種の植物。天然記念物タンチョウが代表的だ。

 岩保木水門で道が途絶えたので引き返し、達古武湖に沿って細岡展望台へ登る。正面に雄阿寒岳、雌阿寒岳、その下の鶴居村。湿原中央を蛇行する釧路川。巨大な岩保木水門も小さく見え、背後の釧路市街も良く見える。蝉しぐれがすごい。よく見ると盛んに鳴いている蝉も見えた。エゾハルゼミだ。エゾスカシユリの赤い花も咲いていた。湿原からしばらく走って塘路のYHに荷物を預け隣駅の茅沼温泉に行く。シラルトロ湖も美しい。



   ●圧巻の摩周湖

 7日目。11度と寒い。長手袋に替える。牧場、牧草地、ミルク販売など畜産業関連が広がる標茶を行く。巨大なフキの葉で写真を撮って戯れる。
 摩周湖のYHに荷物を預けて、緩い登りを一汗かいて登り、摩周湖と対面。幸いにも晴。湖面と周りの山が良く見える。わずかなさざ波、湖面の色と緑の取り合わせもいい。真ん中のカムイッシュの小島は最大水深211mから盛り上がった火口山の山頂だ。857mのカムイヌプリの険しい崖と湖面(351m)との対比、摩周湖を世界遺産にとの運動もある。火山の中央部が陥没してできたカルデラ湖で20平方キロ、周囲約20キロ、世界有数の透明度を誇る。



 8日目。霧の中をいったん弟子屈まで戻り、屈斜路湖に向かう。突然エゾシカが3匹道路を横断。危うくクルマに跳ねられるところだった。標高120mの釧路川の始まり屈斜路湖着。ウグイ、ニジマスを狙っている釣り人2人。屈斜路湖と釧路の落差は110mほど。豊かな水量がゆっくりと釧路湿原を蛇行している様を実感する。湖畔には無数の池塘が広がる。湖畔の砂地に手をつけると熱い。湯気も出ている。「砂湯」と呼ばれている名所でシニア夫婦が足湯を楽しんでいる。屈斜路湖に別れを告げ、川湯神社を通過。



 標高328mの野上峠を越える。このあたりから雨が降り出す。10キロ以上の長い下りに入る。大型トラック、ダンプが自転車に配慮して大きく間隔をとって抜いてゆく。偶然見つけた道の駅「パパスランド」の足湯で冷えた身体を温める。気温は12度。遂にオホーツクのうらぶれた宿に着く。

    ●オホーツクの陰鬱な海

 低い雲がたれ込め、陰鬱な雰囲気が広がっている。宿は忘れられたような存在で、雪害で壊れた天井から雨漏りがしたが、温泉はアルカリ質のスベスベした良泉で、その古くささが何ともいえない。

 9日目。気温8.5度と寒い。オホーツクの暗く激しい海が広がる。斜里港はなにもない。以久科原生花園でエゾスカシユリ、ハマナスを見て、長い一直線の農道を走って国道に出る。知床に近づくにつれ、原生林には樺の白い木肌も見られるようになる。海岸べりの長い17キロは海が荒れたら閉鎖すると表示されている。海のなかの柱状節理よりも細かな岩、オシンコシンの滝の驚くほどの水量、高さ10m、幅10mの滝は国道の下をくぐって海へ流れ出る。



 知床横断道に入口にある知床自然センターまで登る。知床を紹介する映像を見る。知床の四季を主に空中から撮影した映像に引き込まれる。自然の豊かさ、厳しさ、多様な動植物、シマフクロウ、ヒグマ、トド、アザラシ、鮭、オオワシ、オジロワシなど、たしかに自然遺産として守らなければならない世界がそこにはあった。ウトロで塘路から再び参加したY氏と別れる。

   ●海上から知床断崖を臨む

 なにげなしに港あたりを走っていたら、観光船に乗り込んでいる風景と出合う。うねりのなか別会社が途中までの短い距離で船を出すところだった。早速、乗り込む。海から険しい断崖の風景を楽しむ。映像で見た知床の厳しい自然の一端を垣間見ることができた。オホーツクの荒波が岩に大穴をあけたり、滝が強風で霧となって海までとどかない光景が続く。

 10日目。曇り。道路脇に広いエゾシカ牧場が広がっている。柵の外から写真を撮っていたら中に入れてくれた。100頭ほど飼っており、注文があれば出荷するという。広い牧場をエゾシカが飛び回っていた。 



 網走国定公園に入る。細長い大きな濤沸湖の畔は原生花園になっている。ラムサール条約にも登録されている白鳥の飛来地でもある。小清水原生花園にはハマナス、エゾスカシユリ、エゾキスゲ、ヒオウギアヤメが群生しており、ハマフウロという可憐な花も咲き始めたとガイドが教えてくれた。オホーツクの海をバックに清潔感のある花園だ。

   ●網走刑務所などを巡る

 網走市内の監獄博物館に行く前に、網走刑務所を訪れる。北海道開発に囚人が動員され、政治犯も収容された。網走川を渡って刑務所に入るのだが、再び橋を渡って戻ることはないと恐れられた。別の場所に作られた「監獄博物館」の展示では、当時の様子を知ることができた。 



 北方民族博物館はアイヌだけでなく、広く北極圏で暮らす人々の文化を豊かな資料を展示して紹介している。優れた博物館だった。
 午後5時、女満別駅の近くの焼き肉屋で打ち上げ。本日は109キロ。午後7時半に田園地帯の最後の温泉宿に到着。



 最終日のわずかな走行を除いて10日間で700キロを走行し、1日当たり70キロと、観光をメインとしたサイクリングとしては、観光スポットや温泉を楽しむ時間も十分とれて、理想的な結果となった。広い北海道を、限られた日程でサイクリングするため、2度の鉄道による移動を行ったことも、結果的に正解だった。今年は全国的に天候不順の影響を受け、曇りや霧雨の日もあったが、最低気温8度、最高気温25度だった。(了)


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