●HOME ●自転車は楽しいよ  いろいろな自転車  自転車の乗りこなし
 自転車と道路  サイクリングの実際  自転車と健康
●近場のサイクリング  国内自転車旅  海外自転車旅


  雨と雷で出足くじかれる

 <第1日 9月23日>
 瀬波温泉を5:00に発って、S、K、それに今回初めてMさんが加わった3人のメンバーを村上駅(写真上)で待ち合わせる。空は前線の下。時折、すごい雷の音が聞こえる。

 3人の到着を待っている間に雨が降り出す。出発時にはかなりの雨となり我々の出足を十分にくじいてくれた。誰の運が尽きたのかと言い合う気の置けない雰囲気の中、田舎の駅の好奇の目を尻目に猛者連は一路「朝日スーパー林道」を目指す。
 今回は「朝日スーパー林道リベンジ」とSさんが勝手に決めている。彼は数年前にあるメンバーと2人で挑戦したのだが、この山容があまりに厳しいルートであったため、訓練不足の相棒が敗退してしまったので、今回こそはというリベンジなのである。


  朝日スーパー林道ってどんなとこ?

 その朝日スーパー林道はどんな道なのか。
 朝日岳のブナ林帯を走る林道で、新潟県岩船郡朝日村と山形県東田川郡朝日村を結ぶ幅員4.6m、延長52.kmの道路をこう呼んでいる。後に県道鶴岡村上線(349号線)に昇格し、朝日スーパーラインとも呼ばれているが、樹齢400年のブナの原生林が広がっている、朝日山地森林生態系保護地域という国内最大の保護地域を通過している。スーパー林道(特定森林地域開発林道)と称する山道は全国に23路線、距離にして1,180kmがある模様で、開発と自然破壊の両サイドからいまも議論が絶えない。一般人が入れるのは、森林浴、山菜採り、バイク乗りが中心だと思うが、たまに自転車でという気違いもいる。

 時折、雷が轟く。それぞれ、雨対策は万全なのだが、次第に雨だか汗だかわからなくなり、合羽の内側から濡れてくる。少しづつ高度があがる。やがて三面ダム(みおもて)が見えてくる。追いつ、抜きつしているうちに、誰がどこを走っているのかわからなくなる。
 遅れていると勘違いして探しに戻ったりなど、途中で時間をロスする。だいたい3人以上となるとこのような珍事が起きる。

 10時。猿田発電所前で雨が止んだ。早速、合羽を脱ぐ。涼しいし、身軽になった。道路には時折、栃の実が落ちている。途中キャンプ場で休憩しながら、鳴海山の峠を目指す。猿田キャンプ場の管理人とおぼしき人が、栃の実を拾い集めている。栃餅にするのだという。

 ここからひたすらこいで、つづら坂を上って行く。斜度は7%ほどで激坂ではないものの、なにしろ距離が長い。高度を上げるに従い、朝日連峰の全容が見渡せるようになる。さすがに、山懐は深く大きい。自転車をはじめてから朝日連峰をこいで登ろうとは思わなかった。山域の大きさに、飲み込まれてしまったかのようだ。


  深く大きい山懐こぎ登る

 峠の手前からはダートのコースとなり、スーパー林道とは名ばかりで石ころにハンドルを取られ、踏み込んでもずり下がる苦行を強いられた。鳴海山の頂上らしきところを通過して、標高777mの峠に到着する。ここが新潟と山形の県境だ(写真下)。

 その峠を山形県側に下って行く。道は相変わらずのダートで慎重に下る。路面からの振動が両腕を通して肩や頭に伝わる。時折サドルから尻を浮かして、振動がなるべく伝わらないようにする。路面を注視していないときわめて危険だし、スピードは控えめに、急ブレーキも厳禁だ。
 山形県側の林道には速度制限が「自主規制」という面白い看板がところどころに立っている。危ないからスピードは控えめにというサインなのか。自主規制だから科学的根拠もない。あやまって谷底に落ちても知らんぞという意味だろうね、きっと。


  ダートの下りでハプニング連発

 だからもちろんボクも自主規制で慎重に下る。Sさんは彼なりの自主規制で下り降りていたところ「リム打ち」パンクをやり、チューブには3mmもの大きな穴があいてしまった。やはり慎重に、が良いようだ。Kさんも振動でリアバックの取り付け皮紐が切れ、さらに長いテープが車輪に巻きつくアクシデントに見舞われた。まったく、いままで経験したことのない、長いダートの下りだ。

 手首は長いブレーキングで痺れ、肩も凝って来た。このダートが楽しいというSさんはやはり猛者だ。安全に下りたいボクとしては、ダートはなるべく願い下げなのだが、今回はブレーキシューとリムとの相性のことも勉強させてもらった。ボクの場合はブレーキシューがリムを削るようなブレーキングとなりリムに対して良くないし、雨の際には泥状の削り滓がリムに付着してブレーキ効果を弱めていることもわかった。

 こうしてダートを慎重に標高差で約500mほど下り、ようやくにして舗装路が現れた。もう山里である。こちらの田圃では刈られた稲が独特のやり方で干されていた。田舎の郷愁の雰囲気がただよっている。荒沢ダムの上流地域だ。

 民宿見晴荘へのアプローチも古くて水びたしの長いトンネルを二つも通過しなければならなかった。観光客もめったに訪れない秘境のダムサイトだ。古民家の、太い梁や柱が印象的で、ここ朝日村も遂に合併して鶴岡市に吸収されてしまうと、なかばあきらめ顔のご主人の話が心に残った。
 場面は変わって酒宴では3人で1升瓶を軽く空けてしまった。酒の肴は「滅び行くランドナーの世界」という結構シリアスなテーマが中心となった。
 本日の走行87km。



  圧巻はブナ原生林

<第2日 9月24日>
 荒沢ダム、新落合、田麦俣、湯殿山有料道路入口、大越、上野、大井沢、地蔵峠、古寺、古寺鉱泉朝陽館まで。
 荒沢ダム8時過ぎにスタート。今日のコースは一般国道と県道をつないだコースだが、やはり山岳コースに変わりない。いったん標高92mの新落合まで下り、そこからUターンしてまた山に入るというコースとなる。この道は「六十里越街道」という昔からの名がついており、湯殿山神社に向かう湯殿山有料道路の入口とも接続している。
 途中の集落、田麦俣で多層民家、遠藤家の藁葺き3階建を見学する。山形県指定の有形文化財とある。屋根の妻側正面は「兜造り」と呼ばれる独特の風格を持っている。内部は養蚕を中心とするこの地方の農家の暮らしぶりが様々な生活用具類とともに展示されており、博物館級の内容がみられた。山間に建つたたずまいも素晴らしかった。

 圧巻はブナの原生林と出会えたことだ。雪に耐えて根本の部分が曲がっても真っ直ぐ伸びようとする逞しい生命力が感じられたし、白く艶やかな木肌に丸いグリーンの苔が自然の作り出した文様のようで、しばし見とれてしまう。さらにこの明るいブナの森に陽が差し込んで木肌が輝くさまは、なんとも例えようがない。そんなわけで、「いいなぁ、いいなぁ」と立ち止まるので、自然と時間が経過してゆく。実に楽しいブナの森だ。これ以上の森林浴はあるまい。さらに、森にガスがかかり幻想的な雰囲気が漂うさまも、いつまでもその場に身をおいていたい気持ちにさせてくれる。


  標高927mの最高地点越える

  最高地点「大越」は標高927mだったが、斜度は8%程度で、たまに10%の坂があるほどで、しかも登り下りとも完全舗装だったので快適だった。下りはガスの中を一気に500mほど下る。路面を注視して、スピードを押さえ目にする。ガスがメガネに付着して路面が見えなくなる。下りきったところが、展望が開けた月山湖で、道はまた登り基調となる。月山湖にそそいているのは寒河江川で、ダム湖からは東に向かって寒河江に流れ下っている。

 途中「地蔵峠」のピーク(648m)を越え、少しの下りで古寺に着く。古寺から少し登り返したところにある宿(古寺鉱泉朝陽館。写真下、標高666m)は、大朝日岳への登山口にある鉱泉つきの山小屋だった。山からは続々と大きなリュックと山靴姿の登山者が降りてきて小屋前の古寺川に渡された板の橋を渡って行く。

 テレビはおろか、夜はランプの宿となった。このランプのわずかな光を頼りにキーボードを操作した。谷川の流れ下る音のみが聞こえる。泊まり客はすべてが登山客で、自転車できたことに驚いていた。ここでも1升瓶がたちまちのうちに空いてしまった。話題がなんであったか、ブナの話も出たようだが、忘れてしまった。確かに覚えているのは香ばしい岩魚の味だ。
 今日の天候は晴れ、曇り、ガス、霧雨、小雨とめまぐるしく変化した。気温は18〜20度でとても快適だった。
 本日の走行79km。最高時速51.6km。


  ブナ峠から最上川へ

<第3日 9月25日>
 ぶな峠、木川ダム上流、朝日鉱泉、愛染峠、黒鴨、荒砥まで。
 最終日。残念ながら雨。大朝日岳を目指す中高年の登山グループが7時半頃、完全装備で出発していった。福岡、大阪、名古屋から来ている混成グループで難渋が予想される。

 我々は、朝日鉱泉、愛染峠経由のコースを早々と変更して、最短距離で荒砥に出るルートを取ることにする。
 古寺まで下って、今度はブナ峠(750m)に登る。たいした登りではない。ここから500m以上のダウンヒルだ。雨が降っているので気が抜けない。やはりブレーキの効きがよくない。雨が降っていないときのブレーキングとは全く違う。


 辿ったのは木川ダム、立木、水口だ。宇津野で最上川と遭遇する。大杉橋を渡り国道287号に出る。白鷹では、雨の中「鮎まつり」が行われており、簗場の様子を見学する(写真)。鮎は雨の川は下らず、雨が降った翌日の好天時に落ち鮎となって川を下るのだという。鮎の塩焼きとビールで乾杯した。

 新潟県の村上から逆Uの字に朝日連峰の裾を北上し、スーパー林道を踏破して山形側のダムサイトまで走り、さらに県道と国道を走り継いでブナ林を抜け、山形市と米沢の真ん中あたりの最上川畔まで、巨大な山塊、朝日連峰をグルリと巡ったわけだ。よくぞ自転車で。リベンジの意味が分かったような気がした。

 荒砥駅には10時45分着。37kmだった。
山形鉄道の長井フラワー線に乗って、JRの赤湯で山形新幹線に乗り継ぐ。帰宅は18時。本日の走行距離は42kmとなった。



TOP